【悠悟Side】


「まだだな。もう少し説得力のあるものを見せてくれ」
「はい……」

俺の前で小さくうなずいたのは俺が昔から目を掛けているチームリーダーだった。

企画書にNGを出すのはこれが四回目だった。

打たれ強さが強みの男だが、俺の話を聞く顔はさすがに強張っていた。期待しているからこそ厳しくしているのだが……。

俺はひと呼吸置くと、声をやわらげた。

「だが最初よりずっと良くなった。もう少しだからがんばれ。君ならできる」
「はい……!」

チームリーダーの表情がほぐれた。

どうやら選んだ言葉は正しかったようだ。しっかりとした足取りで去って行く部下の後ろ姿を見送りながら俺は息をついた。

すると美香がキーボードを打ちながら笑いを堪えるような顔をしていた。