仕事にストイックな社長らしいクールな言葉だった。けれども私の胸はじんわりと温かくなった。

コーヒーもだいぶ冷めてしまった。
時計を見るともうすぐ午後九時になるところだった。

明日も仕事だし、今夜は帰してもらえるならあまり長居をしても申し訳ない。

それに実はこの後は私が楽しみにしていたことがあった。

「では私そろそろおいとまします」
「帰る?」
「はい、社長もお忙しいですし、私も予定があるので」
「予定? 聞いていなかったが?」

急に社長の声が固くなった。いきなり何を言い出すんだとでも言いたげな口調だった。

「あ、いえ、大したものではなかったので……実は他にハマっているスマホゲームのイベントがありまして」
「ゲームのイベント?」

社長の切れ長の目がさらに鋭くなる。