さぞやうんざりした顔をしているのではと思ったけれど、社長の様子は意外だった。
むしろ、ベルト様のサンプル動画を真剣に見ている。

「こういう男性が取引先にもいるな。隙がないんだ。いい人に見せているが、実は相手の力量や真意を笑顔の裏で探っているんだよな」
「そうなんです! いつもにこにこしているけれども、ヒーローたちの能力や適性をよく観察するクレバーさもまた魅力なんです」
「最近のゲームは面白いものがあるんだな」

社長は私のスマホを弄って他のキャラたちまでしげしげと見ている。

いつもは仕事のデータを睨んでいる社長が二次元のキャラ達を眺めているのが、とてもシュールな光景に見える。

「なんだが嬉しいです」
「なにがだ?」
「私がこういうものが好きだということを隠していたのは、知られると周りからよく思われなかった経験があったからなんです。でも社長は受け入れてくださったから……」
「俺が君の趣味を知ったところで、君の仕事ぶりが変わることはないだろう?」
「はい」
「ならそれでいい。今まで通り仕事をこなしているのに評価を下げる理由はどこにもない」