うどんと一緒にふたりでオードブルも食べてしまうと、社長がコーヒーを淹れてくれた。

今夜は抱かない発言に安心して私はすっかり気が抜けてしまっていた。

社長と取り留めのないことを話していると、彼が私がやっているゲームに興味をみせてきた。

「なるほど、乙女ゲームというものはわかった。で、君が夢中になっているベルトとはどういうやつなんだ」
「ええと、それはこの方で――」

私がスマホを弄っていると社長が隣にやってきた。

ドキっとするけれども、私は冷静を努めて操作を続ける。

「この方です。渋くてイケメンでしょう」
「ふぅん、髪が青いおじさんなんだな」
「乙女ゲームのキャラクターの髪はカラフルなんですっ。ほら冷静沈着で落ち着きのある雰囲気でしょう? ベルト様は国の将軍を務めている方でヒーローたちの指導者であり父親のような存在でもある方なんです」

音符ボタンをタップするとサンプルボイスが流れた。

「いいお声でしょう? 頑張っているヒロインを包容力全開で見守ってくれて、労わりの言葉をくれるんです。その余裕のある紳士な感じが堪らなくて……」

ここまで言ってはっとなる。

社長相手に熱弁してしまった。

推しのことになるとつい我を忘れてしまうのがオタクのいけないところだ。