自棄飲みはベルト様のことが発端なのであまり詮索されても気まずい。

かといって他に話題も浮かばないし……と思っていたら、社長は窺うような顔つきになって声を潜めた。

「じゃあプライベートか。恋愛とか」
「れ、恋愛。うーん、恋愛と言えばそうなのかもしれないですが……」
「どういうことだ?」

社長は妙にじれったそうにしている。スルーしてくれなさそうな様子だ。

社長には秘密は知られてしまったし、と私は観念して自棄飲みした理由を教えた。

絶対ひくだろうなと思ったけれども、社長の反応は意外なものだった。

「何だそんなことで落ち込んでいたのか。てっきり俺は男にでもふられたのかと思った」
「そ、そんなことではないです! 私にとっては失恋したようなものなんです! 生死に関わる問題なんです!」
「大袈裟だな」

社長があまりにもあっさりと返してきたので私がつい本音を言うと、社長は楽しげに笑った。なんだか安心したというようなくだけた笑顔だった。