「君は覚えていないかもしれないが、酔っていたとはいえ君の感じ方はかなりのものだったぞ。処女とは思えないくらいにな」

私はかぁあと頬が熱くなった。

「俺も君を夢中で抱いてしまった。俺たちは相性がかなりいい方だと思わないか? 今だってまた君を味わいたくてうずうずしている」 
「そ、そんな……」

社長に私への恋愛感情なんてあるはずがない。つまり、たがいの欲望を満たすだけの冷めた関係になれということだ。

そんなことできるわけない。

今までの秘書みたいに軽く扱われて突き放されるだけの存在になるなんて、想像しただけで絶望感に襲われる。

社長が押し黙っている私を抱き寄せ、耳元に息がかかるくらい近く唇を寄せた。

「不安に思うことはないだろ。俺に抱かれる時は目を閉じていろ。君の大好きなキャラに抱かれていると想像すればいい」

背筋がぞくりとなる。その声で言われると、つい「はい」とうなずいてしまいそうになる。でも認めるわけには――。

「嫌ならいいんだ。だが君のこんな愉快な秘密を黙ってやれるほど俺は大人じゃない。みんなどう思うだろうな。クールで仕事ができる女性で通っている君にこんな趣味があるなんて知ったら」

残酷な言葉に、私の脳裏に忘れられない辛い記憶が甦った。

……もう、あんな思いはしたくない。

泣きそうになるのを耐えながら、私は社長を睨んだ。

「いいね、君はそういう顔もするんだな。ますます手放せないな」

むしろ社長はスイッチが入ってしまったようで私の頬に手を添えて、欲情がにじむ顔に笑みを浮かべた。

「拒まないということは、条件をのんだということでいいんだな」

落ちてきた唇を私は黙って受け入れた。

こんな男のそばで働いていたなんて……ベルト様、私はこの先どうなってしまうの?