体がふんわりと浮かぶような感覚がした。
糊のきいたつやつやしたシャツが頬に触れて気持ちいい。

いい香りがする。色っぽい男性の匂い。

「部屋番号、言えるか?」

ぞくっとするような低くていい声が聞こえた。

どうしてベルト様が私を……?

ああこれは夢だ。いつも見ているベルト様が私をお姫様にしてくれる幸せな夢。

どうか醒めないで。

間の抜けた声で部屋番号を言うと「鍵はあるか」と聞かれたのでバックのポケットにあると返す。

柔らかい場所に寝かされた。見慣れた天井。私のベッドだ。

「鍵は閉めてポストに入れておくから忘れずにな。じゃあまた明日」

黒い姿が踵を返すと、眠気に襲われながらも私はその手を掴んでいた。行かないでベルト様。