重い気持ちで社長室に戻った。

今すぐ家に帰ってベルト様ファンたちとこの悲劇について慰め合いたかった。
しかし仕事とプライベートは分けなければならないと平静を装ってキーボードを打ち始めたものの、頭の中はショックでまだぼんやりしていた。

「どうした。顔色がすぐれないな」

ああ、ベルト様のいい声が聞こえる。

そう、あの方はいつもこうして優しい声でヒロインを気遣ってくれた。あの方に会えないなんてやっぱり悲し過ぎる……。

「何かあったか?」

もうあなたに会えないのがつらいんです!
そう思って泣きそうになりながら顔を上げた瞬間、私はぎょっとなる。

社長が窺うような顔をして、身を屈めて私の顔を覗き込んでいた。
声が似ているので、つい変な妄想をしてしまった。

「何か考え事をしていたのか? 君らしくないな」
「いえ、なんでもありません」

私は内心で焦るのを誤魔化してかぶりを振る。
さっきまで色々あったというのに平然としている社長がひどく冷淡な人に見えた。

社長はまだ私のことが気になるのか、私の顔を見つめ続けている。
女性社員たちがたまらなく色っぽいと賞賛する切れ長の目からの視線に落ち着かないものの、私は仕事の話を持ち出した。