寝起きの彼女はぼんやりした目をこすりながら、教壇にたつ先生を見る。

「毎回毎回寝てんじゃねーよ。これ、解いてみろ」

「えー」

黒板に書かれた問題は発展問題。

寝ていた水季には酷だ。

「わかんないよ、Pが動くとか知らないし」

軽口をたたきながらも、表情には焦りが見える。

私はうつむいた。

手元にはすでに解き終わって答えが出ているノート。

そっと、隣を見るとまだ困った顔の水季がいる。

私は右手を出し、小指の先を見て、それから手を握った。

「…これ、使う?」

聞こえないかもしれないような小声で話しかけると、彼女は一度で気が付いた。