瀬木 遥 side


せっかく日和が
開いてくれた唇の深くまで
触れられたのに、邪魔された苛立ちで
インターホンの画面を覗いた


『(………あれ?……この子)』


2階を一度見てから、
きっと顔を赤くしてるだろう日和は
すぐ来ないと想像し玄関の扉を
チェーン越しに開けた



『‥‥なに?』


そこにいたのは
帰ったと思ったはずの日和の友達だった



『あ、あの私‥
 ひよりちゃんにまだ
 話したいことあって‥』


綺麗な子だとは思うけど、
日和と同じように
真っ赤な顔をして話すこの子を見ても、
なんの感情も湧いて来ない


どうしてだろう……


あんなに子供みたいに我が儘言ったり、
俺を困らせて泣いたりするのに
日和にしか欲情しない自分がいる




『それに‥ふふ‥‥
 やっと会えたから……』


『‥‥‥‥‥‥‥?‥‥ツッ!!』


ああ……そうか


日和は俺にとっての恋愛の
原点そのものだからだ。


コーヒー飲みすぎだよ?とか
頭拭いてとか、
寝てくださいとか
無意識に俺を心配する小さな彼女


そんな下心のない彼女だから、
強引にでも早く心を
開かせたくなるのかもしれない


『君さ、日和が起きてる時においで。
 彼女、今俺のベッドで
 眠ってるから。』



『‥‥えっ?』


ほらね…
やっぱり思った通りだ。
下心がある上に、佐伯さんが言った
嘘の発言も忘れているのか日和のことを
心配もせず自分のことばかり。


わざと立花ではなく
日和と名前で呼んだのは
相手に対する最大の警告



俺の記憶が間違ってなければだが、
苦い思い出に久々に溜息が出る。



あの子
日和に何もしないといいけど…



瀬木 side 終