「…や…おろして」


『………無理』


私を片手で抱えたまま
寝室のドアを乱暴に開けた後
ベッドの上におろされた


真上から見下ろされるのは初めてで
整った顔が眉を寄せていて、
余計に涙が出る


『悪いけど‥‥今怒ってるから』


「……怒ってるって……分かるも…ん」



沢山見てきた先輩の表情の中でも
私に今見せている表情は怒りが伝わる



『‥‥‥アイツに嫉妬した』


えっ?


「んっ………」


泣く私の首元に
温かい何かが触れて
体が思いっきり跳ねる



耳元に移動したそれが
舌だと分かった私は
そこから逃げようとするけれど、
力も体も大きい瀬木さんには勝てない



「んっ‥‥私だって……嫉妬……した」



『……えっ?』


「グスッ‥‥瀬木さんが…
 弥生ちゃん触ったから」


体を起こした瀬木さんは、
私の乱れているであろう髪を
横に流してから
涙を丁寧に拭っていく。



『ん‥それで?』


「瀬木さんが弥生ちゃんのとこに…
 行っちゃったらって……恐くなった」


ただそっと置かれただけの手


だだそれだけだけど、
この手を独占したいって
見苦しい感情が沸いてしまう


『フッ‥‥俺も同じ‥‥』


「えっ?」


『偶然部屋から出てみれば近付かれて
 告白なんかされてるし。』



隼人くん‥‥


いつも冷静で落ち着いてて
まだ時々何考えてるのか分からないけど
そんな隼人君が私に嫉妬?




「…‥‥隼人くんしか…やだよ」



『俺も‥‥日和だけ』



泣いてすごくぐちゃぐちゃな顔で
笑顔を向ければ、
おでこに触れた瀬木さんの薄い唇が
目尻、頬に触れてくる



『‥‥‥ここ開けて?』


ドクン


泣いていたから
ちゃんと分かってなかったけど
安心して落ち着いてきたら
今のこの情況に
胸が急速に鼓動し始める


「…ま…待って」


『‥だめ‥‥待てない』


こんな時にそんなこと言われても、
押さえられてる手首から
鼓動が伝わってしまいそう



『‥‥まだ怖い?』


隼人君が怖いんじゃなくて、
沢山触れられた後知らない自分が
どんどん出てくるのが怖い‥‥


触れた手1つにも
醜い嫉妬もしてしまうくらいだ。


私はいつからこんなに
独占欲が強くなったのだろう。



『日和‥‥好きだよ』


顎を捉えられた私は
目の前の綺麗な顔に見惚れて
唇をあっさり受け入れた


甘く優しく降ってくる唇に
緊張している暇もなく舌が入り込み、
どうしようもなく鼓動が高鳴る


「んっ‥‥‥‥ツッ‥‥‥ん」


駄目………
心臓が壊れそう


「んっ‥‥あっ‥‥隼人く‥‥」


とろけるように力が
どんどん抜けていく中
お腹に直接触れた手が滑り込み
私の胸に触れた



ピンポーン