急に大きな声を出した弥生ちゃんが
口元に手を当てて驚いている。


『瀬木 遥って……どうしよう‥‥
 私凄いファンなの……
 本も全部持ってて‥すごい‥
 ふふ‥奇跡だ‥‥ふふ。』


「そ、そうなの!?
 きっと瀬木さん喜ぶよ?」


顔を桃色に染めた頬が可愛くて、
何故か震えてる弥生ちゃん。


そりゃこんな近くに
大好きな作家さんがいたら
嬉しいもんね‥‥‥


瀬木さんのファンがここにもいることに
私まで嬉しくなってしまう。


「安藤くん?どうかした?」


『あ、いや……
 レポート作ろうか。』


1人だと分からないことも、
3人いれば意見が出て
ノートに色々書きこんでいける


やっぱりみんなで
やって良かったかも‥‥


だいぶ纏まってきた頃に
ふと前を見れば
気持ち良さそうに眠る彩がいた。


クーラーで風邪を引かないように
ソファに置いてある私の
ブランケットをそっと掛けた


昨日もバイト遅番って言ってたし
寝かせてあげよう。
無理言ってごめんね彩。


彩には隼人くんとのこと
伝えてあったから、
本当に気を遣ってくれたと思う


『あの、日和ちゃん、
 トイレ借りてもいい?』


「うん、
 そこの扉出たらすぐ左だから」


弥生ちゃんが立ち上がって
リビングを出ていったので
安藤くんに歴史のこと色々聞いてみよう


「あ、あのさ」


『なぁ、立花って
 好きなやつとかいるの?』


「えっ?」


質問しようとしたら
突然聞かれたことに驚いていると
隣の安藤君が肘をついて
こちらを見ていた


なに……?

真剣な眼差しが
いつもにこにこしてる
安藤くんじゃない‥


『ね、立花、聞いてる?』


私の方に近付いてきた安藤くんが
ぐっと顔を近付けてくる


「うん……いる」


変に心臓がドキドキし始めた私は、
参考書を開いて目をそらした


「俺さ立花のこと好きなんだけど」


ドクン


『何してるの?』


ビクッ


低くて私の心を動かす声に
俯いていた顔を上げれば、
仕事部屋の入り口でもたれて
こっちを見ている瀬木さんがいた


『何って‥勉強ですよ』


『へぇ……
 そんなにくっついて?』


えっ?


隣を見上げれば
ほんとすぐそこに
安藤くんの顔があって
驚いた私は立ち上がった