「………暑っ」


何日か前までは
あんなに軽井沢で
涼しさを感じていたのに、
都内はやっぱりそうはいかない


またいつかあの場所に行ってみたい。
私にとって特別な場所となったから。



夕食に冷やし中華を作り
2人で食べた後、
初めて一緒にリビングで映画を見た


しかもテレビではなく
階段の奥の背面に映し出された
大きなスクリーンで。


思いを伝える前は
リビングでこんなふうに
過ごす日が来るとは思えなかった



驚くことは尽きないけれど、
こうしたオフの時間があるのは
ほんの少しの期間だけで
瀬木さんは仕事が入ると
また忙しくなってしまう


だから横に居てくれる時間を
大切にしようと思えた



勉強会を行う日が来て
少しだけ早起きをした私は
仕事が少しずつ始まりまだ寝ている
瀬木さんが起きる前に
軽く掃除をしている


9時に大学で
待ち合わせをするためだ


簡単な朝食の準備をしていたら
2階のドアが開いたので、
キッチンから上を見上げた私は
その姿に洗っていた
トマトをザルに落とした


「は、隼人君、服 !!」


朝からモデル並みに
綺麗な顔の瀬木さんは、
下はタオル地のスウェットを
履いてるものの上は裸のままだ


『暑い……』


「あ、暑いじゃなくて
 ちゃんと服着て!」


細そうに見えても
程よく筋肉がついてる体は、
本ばっかり書いてるけど
ちゃんと引き締まってる


あの胸に私はいつももたれてて
……抱き締めてもらって


って!!
朝から変なこと
考えない、考えない!!


高城さんから送られてきた原稿に
先日書き上げたあの作品に
赤ペンが入ってて、
遅くまでパソコンで
書き直していたのだろう


「隼人くん、朝食作ってあるからね」


『ん、ありがとう』


時間がなくてさっさと食べ終えた私は、
新聞を読む瀬木さんを他所に
仕上げの掃除機をかけている


うわ‥
時間ギリギリになっちゃう


後片付けを終えた私は、
急いで服を着替えてから
階段をかけ降りた


着替える前、
瀬木さんはシャワー浴びるって
言ってたし、
鍵だけかけて出ようかな‥‥



『どこか出掛けるの?』


「わっ!!出掛けるというか……
 課題やるから
 みんなを大学まで
 迎えに行ってくるだけだよ」


『……車出す、待ってて』


えっ?