あれから仲さんは
街へ買い物に行ったため、
キッチンで珈琲の準備をして
食べるか分からなかったけど
一応ロールケーキも持って行った



『先生?
 原稿の進み具合はどうですか?』


『は?早く書かせるために
 わざと来たんだろ?
 見え見えなんだよ、お前らは』


『そんなこと言わないで下さいよ。
 たまたまですよ、たまたま。』


美しい高城さんが綺麗な猛獣と
にこやかに戦ってる。


和木さんより恐いのはもしかして
高城さんだったりして‥‥。



私が言葉使い汚いですよって
言ったのを許してくれるのは、
瀬木さんも締め切り前に
こうなるからだと思う


「あの‥瀬木さん」


瞳を閉じたままの瀬木さんが
ゆっくりと私を見る


『ん?どうした?』


「あの‥‥2階のお部屋だけど、
 私が移動しないと
 高城さんたちツインになるから
 変わった方がいい?」


まだリビングに2人とも荷物あるし、
今ならシーツ変えたてだから
すぐにでも私は移動できそう


『コイツら付き合ってるから
 立花は気にしなくていいよ』


「…………ええっ!!?」


私の驚きように
瀬木さんも喉を鳴らして笑い、
高城さんたちにも笑われてしまった


だって………知らなかったし
全く気づかなかった。


馬鹿なことを聞いて
恥ずかしくて仕方ない私は
顔を押さえて俯いた


「ご、ごめんなさい」


美男美女でかなりお似合いとは
思っていたけど
恋人どうしだったとは……


『日和ちゃん、いいのよ。
 私たちも言ってなかったから。』


『そうそう。
 第一先生が自分のことで
 いっぱいいっぱいで
 言わなかったのも悪いしな?』


何か……空気感が似ていて
二人ともやっぱり大人で格好いいな‥


二十歳の
幼児体型な私には
高城さんのような色気は絶対出せない


瀬木さんも背が高くて
容姿も整って綺麗なのに
何故こんな平凡な私を選んだのだろう‥




『で?いつまでいるんだよ』


甘いコーヒーと
ロールケーキを珍しく食べている
瀬木さんは本当に糖分が
欲しかったのかもしれない。



あとは表情もいつもみたいに
柔らかかったらもっと素敵なのに‥


『とりあえず3日の予定。
 出版社というか
 俺たちはこれが限界だ。』


『ということで!!
 先生宜しくお願いしますね』



『言ってろ』