そんな穏やかな時間も束の間


仕事モードになると、
人格が変わったように真剣になり、
私が書いた答案に赤ペンの嵐が来て
思わず苦笑いしか出なくなってしまう


でも以前と違って、
瀬木さんが私にこうして
色々な顔を見せてくれている気がする


だから私も、今の私を隠さず
瀬木さんに見せていきたい



『立花』


「なんです‥‥あっ……なに?」



顔を真っ赤にして
今の精一杯で答えた私に
綺麗な顔で声を出して笑われた


悔しいから
絶対沢山合格が貰えるように頑張ろう。



それから2日間

瀬木ゼミナールが
日中繰り広げられて
言葉だけではなく
色からの連想だったり様々な事を
学ばせてもらっている


『全然駄目』


『深く考えすぎ』


厳しい言葉を貰えば
デスクでもう一度悩んだり
資料を探しに行ったりした


だからこそ
悩んだ答えに近付けた時に貰える
◯は相当嬉しかった


1週間が終わろうとしていた頃
瀬木さんも執筆が進まないのか
テラスに出て珍しく
煙草を吸ったりしていた


私には何もしてあげられないから
熱いコーヒーを淹れたり
今は一人にさせてあげたい時は
仲さんのお手伝いをした





『こんにちはー』


昼下がりに聞こえた声に
カウンターでアイスカフェオレを
仲さんに淹れてもらっていた私は
勢いよく玄関まで走った



「高城さん、和木さん!!」


やっぱり声の主たちは
瀬木先生担当の高城さんと和木さんだ



『こんにちは、日和ちゃん。』


相変わらず綺麗な高城さんは
いつものスーツじゃなく
ノースリーブの細身のワンピース姿


和木さんも薄手の半袖の
シャツとパンツを合わせ
2人ともモデルのようで
いつもと雰囲気が違うから
ドキドキしてしまう


「早かったですね。
 突然でびっくりしました。
 瀬木さんお仕事中ですけど
 呼んできますね。」


『ああ、呼ばなくてもいいよ。
 多分今機嫌悪いだろうから』


えっ!?