瀬木 遥 side


泣きながら机に突っ伏して眠る彼女を
ベッドに寝かせようと抱えれば、
やりかけの与えた課題が見えて
思わず目を疑った


ベッドに寝かせてから
隣に一緒に体を横たわせ、
肘をついて涙の残る頬に指を這わせた


あんな答えを書かせるために
課題を与えた訳じゃない


なのに………


立花には悪いけど
もう押さえれそうにもない。
やっぱり彼女は
俺のことを覚えていたから。


きっと俺が名前を呼んだら
彼女は驚くかもしれない。


6年前いきなりいなくなった彼女を
文面でお世話になった
櫂さんを訪ねた大学で
見かけた時にもう決めていた


もう離さないって‥‥


だから矢野‥
起きたら君にすることを許して欲しい


長い髪に指をとおして小さな頭を撫でる


『(……矢野、やっとつかまえた)』


瀬木 side 終