出発当日


大学でお兄ちゃんと彩と
待ち合わせということで、
私は準備を終わらせてから
キッチンでバタバタしていた


『掃除なんていいよ』


「駄目です。2週間も空けるなら
 綺麗にしてゴミとか
 残しておきたくないですから」


瀬木さんはこの季節にも関わらず
新聞片手に優雅に
熱いコーヒーを飲んでいる


洗濯は乾燥し終えて畳んだし
シーツも変えたし
後は大丈夫だよね?


火の元だけチェックし終えた私は
ようやくリビングで待つ彼の前に立った


『終わった?……荷物貸して』


「持てますので大丈夫‥‥あっ」


『はい、言うこと聞く。
 車回して来るから
 戸締りしてから
 マンションの前で待ってて。』


2週間分ともなると
荷物はどうしても少なくならず、
大きめのバケージを
瀬木さんに借りた私


瀬木さんも
同じくらい大きな荷物があるけど、
きっと私と違って
仕事道具なはず‥


最後にもう一度2階に行き
戸締まり確認をしっかりとした私は、
言われた通りエントランスを出て
外で待っていた


ん?

ちょっと待って……


車ってことは
先輩が運転するんだよね


うわ…‥‥‥…
どうしよう‥‥
考えたら変に緊張してきた


そんなことを考えていたら、
私の前に黒い一台の車が停まった


「(‥‥わぁ‥カッコ良すぎるし‥)」



何もしなくても容姿が綺麗で
カッコいいのに、
更にサングラスをかけて
車に乗っている姿に
素敵すぎて俯いてしまう



ガチャ


大きめの黒い車の窓が開くと、
奥に座った瀬木さんが
中からドアを開けてくれた


6年前からは想像出来ない
大人びた姿に
見惚れそうだ


『立花、車高が高いから手かして』


「えっ?大丈夫ですよ‥‥あっ」


断ったのに、
差し出された手が私の手を強引に掴むと
力強くそのまま引き上げられた


嬉しいけど
顔が絶対赤い私は
そのままお礼も言えず
また俯いてしまった


『クス‥‥それじゃ
 櫂さん達の所に行こうか』


あまりの緊張で声が上手く出せない私は
大きく何度か頷くと
ゆっくりと車は発車した