ガチャガチャ


マンションに着いてから
玄関を開ければ、
涼しい空調にホッとすると、
玄関に並ぶ靴を見て
急いでリビングへ向かった


カチャ


『こんにちは、授業もう終わった?』


『日和ちゃん久しぶり』


やっぱり!
高城さんと和木さんだ


「瀬木さんただいま戻りました。
 和木さん、高城さん、こんにちは。
 今日で一期の最後だったんです。」



『立花おかえり。
 飲み物持ってこっちおいで』


「あ、はい‥」


手を洗ってから
冷蔵庫から冷たいアイスティーを
氷と一緒にグラスに注ぎ、
瀬木さんの隣に腰掛けた


あれ……?
てっきりお仕事かと思ったけど
原稿とか見てないし、
今日は仕事じゃないのかな



『立花、明後日から
 二週間くらい予定空けて
 欲しいんだけど出来るか?』


に、2週間!!?


思わず飲みかけていたアイスティを
詰まらせそうになる



『瀬木先生、毎年都内は暑いからって
 長野の別荘に行って執筆するのよ。
 私と和木君も仕事あるから
 流石に二週間は無理だけど
 最終日近くに休み取って行くのよ』



暑いからってだけで
別荘に行けるこの人って……
本当に次元が違う


「あの、兄が今日そんなようなこと
 言ってたんですけどこの事ですか?」



相変わらず深く腰掛けている瀬木さんは
少しだけ優しい表情をして口角を上げて頷く


『ん、そういうこと。』



去年はバイト三昧で、夏休みなんて
何処かに出掛けた事なかったから
これはもう旅行だ‥‥


「あ、あの‥‥
 友達呼んでもいいですか?」


お兄ちゃんのせいで彩は来る気満々だし
どうしよう…


『部屋はあるからいいよ。
 その代わり向こうに行ったら
 仕事手伝うこと。』


ドクン


キレイな指が私の頭を優しく
くしゃりと撫でると
たったそれだけのことなのに
顔が熱くなる


それなのに表情すら変えず
落ち着いたままの瀬木さんは、
マグカップを持つと立ち上がり
仕事部屋に行ってしまった


ガチャ



『瀬木先生……だよね、あれ。』


『そうだな。あんな隼人初めて見た』


『『ねぇ?ひ、よ、り、ちゃん』』


「…………」