振り向いた先にいたのは
先日会ったばかりの出版社の……


なんだっけ、
そうチャライ人!!
えっと、そう、和木さんだ!!


「ち、違います!!
 瀬木さん熱で倒れられて、その、
 き、着替えを」


ボタンにかけていた両手を
勢いよく離して立ち上がる。



‥な、何、焦って
言い訳してるんだろう。


別に悪いことしてた訳じゃないのに、
これじゃ、かえって怪しまれるだけ



『はぁ?熱!?
 鍵スペア持ってるから
 勝手に入ったけど、
 また倒れたの?……医者は?』


「あのまだです……
 私もさっき帰って来て。
 瀬木さん病院はいいって断るので。」


和木さんも鍵持ってたんだ。
そうだよね。出版社の担当の人だから
よく来るだろうし。


でも応答なしで勝手に
上がってくるこの人も
まあまあすごい信頼関係だな‥‥



『はぁ……コイツの言うことなんか
 無視無視!!
 ちょっと電話かけるから待ってて。
 知り合いにいつも呼ぶ医者がいるから
 来れるか聞いてみる』


私よりもうんと落ち着いて
スマホを操作する相手に
少しだけ恥ずかしくなる


だって……
好きな人のこんな姿見て
動揺するなと言う方が難しい


『俺が着替えさせるから、
 日和ちゃん必要なものあれば
 今のうちに買っておいで。』


「えっ、はい!ありがとうございます」


良かった……


誰かがいてくれるだけで心強い


お医者様が来てくれると言う
和木さんの言葉にやっと安心した私は
お言葉に甘えて買い物をしに
来ている


先輩もしかして、
昨日から体調悪かったのかな……


締め切り前で
寝不足なの分かってたのに、
私があんなところで寝たせいで
余計に瀬木さんにも
迷惑かけたのかもしれない


食べれるか分からないけど
お粥作ってあげよう。


朝食も食べれてなかったし、
何か食べないと弱ってしまうから
多めにフルーツやヨーグルトなど
買い足していく。


もしも私がいなかったら
瀬木さん一人だったんだよね‥‥‥。



あ‥‥でも
あの当時の綺麗な彼女とは
どうなっているのだろう。


考えても見なかったけど
あんなに素敵な人だから
恋人がいないわけない。


もしかしたら凄く仲良かったから
今もあの人と
続いてるかもしれないしね‥‥


今は一番そばにいるのに
私やっぱり先輩のこと
何も知らないや‥‥


悔しいな‥‥
ほんとに手が届かない