あれから隼人君の回復と
私の退院の日を無事に迎えて
私たちはまたあの家に帰って来れた。


リハビリをしながら学校にも戻り
瀬木さんも少しずつ仕事を始めた。



そして私が勉強させて頂いた本
【巡り会う】が多くの書店で
発売と同時に1位を獲得した。



そしてクリスマスを迎える頃には
新人賞の他にも文芸賞も授賞し、
瀬木さんは様々な
メディアで取り上げられたのだ。



しかし、退院仕立ての瀬木さんは
メディアに顔を出す事もなく
全ての出演を断ったため、
世間は顔を出さない瀬木 遥に
興味を持ち売り上げが逆に伸びたって
和木さんが言ってた。



「おめでとう‥隼人君」



『日和のおかげだよ‥‥』




それは違うよ‥‥


寝ないでずっと
書いてるのを近くで見てたし
私なんて寧ろ迷惑かけてただけ。




こうした幸せな時間の中で
隼人君の腹部の傷を見る度に、
思い出すのはやっぱり彼女のことだ。



弥生ちゃんはあの後すぐ逮捕され
精神病院へ入ってしまいいまだに
会えずじまいだ。



でもいつか気持ちの整理が
できたら話をしたい


人を愛することを私なんかが
偉そうに話すことはまだ出来ない


でも‥彼女にもいつか誰かを心から
必要とする人に出会って欲しい。
そう願いたい。



「隼人くん、雪!!」




今年もあと少しで終わろうとする年末
私たちは軽井沢に来ていた。
仲さんには行く前に掃除だけ頼み
あとは2人で過ごすからと断ったらしい



リビングで私の淹れた
コーヒーを啜る愛しい人が
テラスにいる私に笑顔を向けてくれる。




色々な事があった1年


それでも私は
この1年を一生忘れない。


『日和‥‥風邪ひくから』


大きな温かいブランケットに
2人でくるまり、降り積もる雪と
白樺の美しさを眺める



「隼人君‥‥大好きだよ」


こんな会話が出来るようになるまで、
6年という月日が必要だった。


長すぎるかもしれないけど、
今が幸せであるなら時間なんて関係ない


白樺の木のようにこの人の隣で
これからも寄り添いながら
支えれるように立っていたい




『ん‥‥‥‥俺も』




私の恋愛日和は
始まったばかりだから。