入り口に立っていたのは
あれ以来顔を合わせてなかった
安藤君だった


『日和……ごめん、私が連れてきたの。
 ずっと面会謝絶に
 櫂さんがしてたから
 安藤君心配して待ってたのよ?』


お兄ちゃん‥‥‥。
誰かがいきなり訪ねてきても
私がパニックにならないように
ここまでしてくれてたんだ……


『外にいるからちゃんと話しなさいね』


「うん……ありがとう、彩」


私から離れて部屋を出ていく彩を
目で追った後安藤君が
ゆっくりとこちらに来た


『立花……体もう大丈夫なのか?』


「うん、もうすぐ退院できるから
 大学にも戻れるよ。
 連絡できなくてごめんなさい。
 遅れもあるし頑張らないとね。」


『そっか。
 ‥‥あのさ俺が
 立花に気持ち伝えたのは覚えてる?』


遠慮がちに俯き
静かに尋ねてきた彼に小さく頷いた


『もう一度言わせてほしいって
 ずっと思ったけど、
 ここに少し前に来たときに
 中庭からずっと一点を見てる
 瀬木さんを見かけて
 俺‥勝てないって思ったんだ』


瀬木‥さん……?


安藤君はそこまで言うと
小さく溜め息をはいてソファにもたれた


『あの人何見てたか分かる?』


「分からない……なに?」


『俺も何見てるんだろうって
 最初は思ってたんだけど、
 ……リハビリしてる立花を見てた』


ドクン


えっ?瀬木さんが?


その時はっと気付いて
口元に手を当てる。
時々感じてた視線ってまさか‥‥‥


『あの人さ‥
 立花が頑張ってる姿を
 黙って遠くから見てたんだよ。
 優しいおだやかな顔してさ‥。』


安藤君……ごめんなさい。
私の心の中には
たった1人の人でいっぱいなんだ‥‥


どうしようもなく
隼人君に今すぐ会いたくて仕方ない‥‥


「安藤君…
 好きになってくれてありがとう。
 我が儘だけどこれからも
 友達でいてもいいかな?」


『バーカ、当たり前だろ?
 先に言うな‥‥。
 じゃあ大学で待ってるから』


「うん!!」


泣かない…
安藤君が必死に伝えてくれた思いに
泣いたりなんかしたら失礼だから。



彩と安藤君を見送りながら
病院の入り口まで車イスで
散歩をしていた。


隼人君……早く会いたいよ


そう思って待っていたら
後ろから肩を叩かれて
見上げた先にお兄ちゃんがいた


「えっ?どうしたの?
 朝も来てくれたのに
 大学あんまり休むと叱られるよ?」


『日和』


「どうかしたの?……なんでそんな顔」


『隼人は今日は来れない』


‥‥えっ?