ん?
遠くで瀬木さんの声が聞こえる‥

それに……お兄ちゃんもいる?



聞こえた声に瞳を開けて
ゆっくり体を起こすとベッドの上で
眠ってしまっていたことに気が付いた


あれから私寝てしまったんだ‥‥


『日和、起きたか』


「うん‥‥お兄ちゃん……来てたの?」


眠い瞳を擦ると
お兄ちゃんが奥のソファから
立ち上がってこちらに来た


『寝れてるんだな、良かった。』


「うん…」


この部屋に来てから
前よりよく眠れてると思う


リハビリはハードだし、
瀬木さんが8時に家に帰ってからも
予習復習をしてるから疲れもある。


でも、瀬木さんと
過ごすようになってから
かなり眠れてるのだ。


コンコン


「……はい」


看護師さんかなと思って
部屋の扉が開いた方を見たら
知らない人が2人ドアの前に立っていて
不安でお兄ちゃんの方を見た。



『大丈夫、隼人の仕事関係の人』


あ……そうか


さっきそんなことを
瀬木さん言ってたっけ‥‥


視線を瀬木さんに向ければ
デスクでまだ仕事をしていた。



『失礼します。先生出来上がった
 見本を持ってきました』


『早く結論出せよ。営業の身にもなれ』


うわ‥‥凄くキレイな人。
それに隣の人もスーツを着ていて
凄くカッコイイ


2人をぼーっと見ていた私は
視線がぶつかってしまい
慌てて頭を下げた


『よお、櫂。』


えっ?


男の人がお兄ちゃんに手をあげたら
お兄ちゃんも軽く手をあげて椅子から
立ち上がった


『大学の時のツレ』


そうなんだ……
それで何となくお兄ちゃんが
ここにいるのがわかった


知らない人と初めて会うときは
必ず居てくれるから‥‥‥


『日和ちゃん、こんにちは』


「あ‥‥‥こ、こんにちは」


『怪我はどう?
 歩くのが無理なら俺が抱っこ』


『和木!‥‥こっちに来い』


笑顔でヘラヘラした人に向かって
少し大きな声を出した瀬木さんに
ビックリする


『おお、男の嫉妬はやだね……』


『和木君、仕事しに来たんでしょ?
 ……日和ちゃんまた後でね』


「あ……はい」


キレイな女性がニコリと笑ってから
瀬木さんの向かいのソファに座った


『ククッ‥相変わらずだな2人とも。
 日和、少し散歩しに行こうか』


仕事の合間をぬって
勉強見てくれてる瀬木さんの
邪魔はしたくなかったから頷いた


『櫂さん……すみません』


『気にすんな、お前は仕事しろ』


部屋を出た私は、
中庭に行きたいと伝えて
お兄ちゃんに車椅子を押してもらった


外に出れば前ほど
暑さも感じなくなってきている。


もう10月に入ったゃったからな……
目が覚めた時は夏の終わりだったのに。



『もうすぐ退院出来そうだな』


「ウソ、ほんとに!?」