それからそんな日々が続いて、
途中からは申し訳ないという
気持ちよりも、どんどん瀬木さんに
答えたいという気持ちに変わっていた



『立花。今日ここに
 仕事関係の人が来るけどいい?』



「私散歩がてら外に行けますから。
 大事な話だと思うし、
 それくらいさせて下さい」


リハビリを終えて
また頭を洗って貰った私は
部屋で洗濯物を片付けてから
髪の毛を縛ろうとブラシを通していた


『貸して』


ドクン


「えっ?いいよ!自分で出来るから」


私の言うことなど聞かずにブラシを奪うと優しくとかして髪を1つに纏めていく


「瀬木さん」


『ん?』


触られている頭がとっても
気持ちよくて
思わず瞳を閉じてしまう


まだ出会って1月くらいなのに
瀬木さんといると
毎日安心して過ごせてて
発作も全く出なくなった。



「そう言えば私はどんな子でした?」


この間は答えて貰えなかったから
気になってまた同じ質問をしてみた


サイドテーブルにブラシを置き
ゴムを取るキレイな手を見つめてしまう


『立花は‥‥‥そうだな‥‥
 ほんとに泣き虫で……真っ直ぐで、
 本を読むと表情が豊かで
 目が離せない子だよ』



泣き虫……?私が?


『はい、出来た』


「うわっ!すごい上手です」


低めの位置で緩く髪を編んでくれ
可愛く髪を纏めてくれた瀬木さんは
向かいのソファに腰かけた


自分が誰なのかすら
まだ分からなくて不安だけど
泣いたりは流石にしていない


それなのに私は泣き虫だったの?



『立花‥こっちにおいで』

「あ、うん‥‥ちょっと待ってね」



瀬木さんは
私が倒れそうになるまでは
手を貸さない。
私がそれを嫌がるのを知っているから。


来週のレントゲンの結果次第で
ようやく固定のギプスが
取れるかもしれない。


もうすぐで2ヶ月半


リハビリのお陰で
前よりは歩けるようになったし
痛みもかなり減っていて、
近い場所なら
支えがなくても歩けるようになった



『あのさ‥‥‥
 立花はどうしたら泣ける?』


「えっ?……
 だって悲しくなんか‥‥あっ」



その瞬間私は瀬木さんに包まれた。
どこか懐かしい香りと腕の感触に
少しだけ心臓が高鳴る



『悲しいばかりが泣くことじゃない。
 だけど、俺の前では気を張らずに
 1回力を抜いてごらん?』


「瀬木さ………腕…離し…て」