「あ、会いたいなんて
 その人は幸せですね……
 こんなにも素敵な人に
 思われていて羨ましいです。」



『ん………とても大切な子なんだ。』


あれ………?
この人‥さっきはあまりちゃんと
見てなかったけど、
近くで見たら気になってしまった



「あの………もしかして
 あまり寝てないんですか?
 ちゃんと寝ないと駄目ですよ?」


『……えっ?』


私の言葉に
一瞬彼の瞳が揺れた気がしたけれど、
目も充血してるし
綺麗な顔にクマがうっすらある



『‥フッ‥‥‥ありがとう‥‥
 そうだね、今日はちゃんと寝るよ』


トクン


「(あ………)」


私の頭に触れた手に、心臓が動いて
咄嗟に胸を両手で押さえる



何だろう………
やっぱりこの人に何かを感じる。
聞いてみようかな‥‥‥。



「あ、あの」
『日和ちゃんここにいたんだ』


ドクン!!


背後から声をかけられた私は
ゆっくりと後ろを振り返った


この子は‥‥誰だろう……


同い年くらいの綺麗な女の子が
少し離れたところに立っていて
こちらに近付いてくる


ドクン‥‥ドクン



あれ………?何急に‥‥?
心臓がどうしてこんなに
苦しくなるんだろう‥



よく分からない状況だけど、
体はどんどん小刻みに震えだす



『落ち着いて大丈夫だから。』


隣の男性が小さくそう言うと
膝に置いたままの私の手を優しく握った


温かい手から伝わる温もりが
安心していいと言ってるような
気がして握り返す



『日和ちゃん大丈夫?
 階段から落ちて怪我したんだってね?
 お見舞いに来たら
 面会謝絶なのね?もう大丈夫なの?』



「‥‥う、うん……大丈夫‥だよ」


サラサラな黒髪の可愛い子は、
私の奥の彼に視線を送ると
少しだけ頬を明らめた


握られている手のお陰で
気付いたら震えがさっきより
治まっていることに気が付く



『瀬木さんも
 こちらにいたんですね?
 今日はお仕事はお休みですか?』


せぎさん?‥‥仕事……?



『‥答える義務はない。』



聞いたことのないような
低い声に彼を見上げれば、
優しい顔はなくなり無にも近い……
そんな表情だった


『私は日和ちゃんの友達なのに?』


この子が‥‥私の友達……?


ニコッと可愛く笑った彼女が、
また一歩こちらに近付いただけで
体がビクッとした



それに気付いたのか彼が立ち上がって
私をみおろしながら優しい顔に戻る



『大丈夫、また来るよ……
 リハビリ無理しないで』


「‥‥‥‥‥はい、
 ありがとうございます。」


頭にもう一度触れた手は
すぐに離れて彼は出口の方へ
歩いていってしまった


『瀬木さん…待って!!
 あ‥…じゃあね日和ちゃん』