突然頬に触れた冷たいものに、
回りに人がいるのに
思わず大きな声が出てしまう



『はい、あげる。喉渇いただろ?』


ついこの間会ったばかりの
綺麗な男性が私にポカリを差し出して
手にそれを握らせてくれた



やっぱり長くてキレイな指‥‥
それに顔立ちが綺麗な人だな‥‥



「来てたんですね!!
 驚いてしまってごめんなさい。」


『いや、俺が悪かったよ。
 驚かせてごめん』



綺麗な顔で優しく笑う彼を見てから
喉がカラカラだった私は
ありがたくポカリを飲んだ


「はぁ美味しい!
 私今リハビリで
 すごい汗かいたんです。
 恥ずかしいから着替えて来ます。
 そしたら…あの‥また本を一緒に
 読んでくれますか?」


初めて会った時から外で何度か
一緒に本を読んでくれる男性との
時間が心地よくて
いつのまにか楽しみになっているのだ


『そのつもりだよ‥‥
 病室まで押していこうか?』


「大丈夫です。
 早く力つけて治したいんです。
 それじゃあ‥‥…行ってきます」



ん?行ってきます………?


ありきたりな普通の言葉なのに
何故かこの一言が引っかかったけど、
楽しみ過ぎて急いで病室へ向かった。



病室に戻った後
リハビリを始めると言った私に
彩が大量にくれた冷たいクールタイプの
デオドラントシートで体を拭いていく


毎日お風呂に入れないから、
リハビリ後には最高のクールダウンだ。



「(はぁ‥気持ちいい……)」



今日もまだ少し暑いので、
半ズボンのジャージを足から抜いて
コットン素材の白の
ワンピースを頭から被った


はぁ……やっぱり楽チンだ


一冊適当に選んでから病室を出れば、
入院も長いからか
すれ違う人が挨拶してくれる



『立花さん、夕食までには戻るのよ?』


「はい」


あの人に会うとなんだか落ち着くの。
会う度に不安がすっと
消えていくような気持ちになる


それは何故だか分からないけれど
中庭に出ると、あのベンチで
本を読む彼の姿に固まった。



やっぱり………何か変だ。


遠くから見てるだけなのに、
あの姿に何故か惹かれている
感覚がすごく私を襲う‥‥



車イスを動かしてゆっくり近づけば、
本から顔を起こした彼が私を見て
嬉しそうに笑った


「お、お待たせしました……」


『そんなに待ってないよ。
 寧ろ早いくらい。白のワンピース
 可愛いね。よく似合ってる。』


「ありがとうございます‥‥
 今日もどなたかのお見舞ですか?」


車イスをベンチの横に固定してから
隣の男性を見上げた。
だいたいいつもこの時間に来てるから
入院されてる方に会いに
来てるのかなって思ったのだ。


『そうだよ‥‥会いたくて来てる』


ドクン