私はあるアイドルグループの妹役としてメンバーになった。活動は順調で、東京ドームでコンサートをすることも出来た。

その私以外の三人には、悲しい過去があった。私は生活が苦しいってだけで、その三人よりは恵まれた環境で生きていた。

そんなある日、リーダーの男子に悲劇が起きた。その男子は家庭暴力を普段から少しされていたらしかった。

それが、過去一酷くなって当たりどころが悪く、入院することになったのだ。

運ばれた時には意識はあったらしい。でも、手術してからはほとんど目を覚まさなかった。

医師の腕を疑ったけど、手術自体は成功したと告げられた。本当に一ヶ月に一度目を覚ますか覚さないかだった。

私はその半年ほど前からその男子と付き合っていて、家庭環境についても知っていた。

彼のお母さんは一度病院に足を運んで以来、息子の見舞いにも来ていないらしい。

こんなに重傷を負った彼は、その年の冬に空へ旅立ってしまった。私は世界中の誰よりも泣いた。

悲しいって感情だけじゃなかった。何も出来なかった私自身への後悔や彼のお母さんに対しての怒り。

何よりも、私が生きていく希望がなくなって、もう、何も出来なかった。考えられなかった。

しばらくアイドル活動も中止になり、私は家に引き篭もった。

そして、桜が散り始めた頃、ボーと歩いていた私の元に酔っ払い運転の車が突っ込んできた。

……そのまま私も帰らぬ人となった。でも、死んで良かったと思うことが一つだけある。

それは、この世界でもリーダーの男子に逢えたからだ。それに、彼に辛いことなんて一つもない。

ここは現世よりも幸せだった。ただ息をするだけでいい。不自由な世界じゃない。

身も心も軽かった。そんなある日、使い人からある提案をされた。

「もう一度、生まれ変わってみたらどうです?現世の時と環境はそこまで変わりませんが、今生まれ変わればまた二人は出会うことが出来ますよ?それに、今回が上手くいけば永遠に二人は結ばれる運命になります」

こんなに都合の良い話があるのかと、最初は信じれなかった。それに、私の彼氏にまた辛いことが起きて欲しくなかった。

「ここでもう一つ。二人には心強い仲間がいます。きっと二人を応援してくれます。また、彼女さんの方にはこの記憶が残ります。解決策も考えられるので、この危機を乗り越えられるでしょう。我々は手を貸しませんけど」

そこで、私は彼氏に内緒で使い人にあることを聞いてみた。

「もしも私が彼を救えたなら、これからどんなに生まれ変わっても彼には辛いことが起きませんか?」

「えぇ、もちろんです」

「じゃあ、彼には内緒で生まれ変わらせていただけますか?」

「はい。後戻りはできません。後悔しないような人生になればいいですね」

そうして、私たちは生まれ変わった。名前も顔も変わっているけれど、雰囲気や言葉遣いは変わっていなかった。

再び、私たちは恋をしたのだった。