「奏、いつまでも俺のこと見てないでサイン書いたら?てか、書ける?」

俺らはサイン会を開いたことが何度もあったからサインを書ける。でも、最初は色々練習したんだ。

奏が来てからはサイン会を開いたことがないし、奏は練習すらしていないであろう。大丈夫かな?

ははは、それにしても、先生面白すぎる!ほとんどの生徒のことを嫌っているはずなのに、奏だけは好いているなんて。

奏のお願いはほとんど二つ返事でOKしそうだなぁ。

「…サインの練習、実はしてたんだ。家で暇な時とかに……ドームが終わったあと、舞さんに今のうちに練習しといた方が良いよって言われたんだよね。良かったぁ、練習しといて」

うん。ナイス舞サン!奏をこんなに嬉しそうな顔にしてくれて。
            ....
「……君は神矢さんか。ついでに君のサインも貰おうかなぁ」

「それって嫌味ですか?そりゃあ奏の方が可愛いしかっこいいから、そこは認めるけど、ついでに、を強調しなくても良くないですか?今、ここにあなたの推しがいるのに、そんな性格さらけ出しちゃっても良いんですか?」

「奏様以外に失うものはありませんから〜」

ニコニコ笑みを貼り付けながらお互いに言い合っていたら、奏が天然発言をした。

「え、先生っていつもの可愛い感じじゃない時があるんですか?ギャップ萌えしそう!」

今回も俺は盛大に吹き出した。ギャップ萌えって、感性面白すぎるなぁ奏は。

「ほら、はは、奏様が本性見てみたいってさ。先生、俺たちの前では素でいなよ?ククク」

「はぁ、本当に神矢さんはウザすぎる。奏様を見習えっての。そんなんでグループのリーダーが務まんの?」

うんうん。こんな俺に、あなたの推しはついて来てくれているんだよ?好いてくれているんだよ?

あなたの推しに、失礼なんじゃない?

「奏、どうだった?これが先生の本性だよ。ギャップ萌え、した?」

「うん。とってもカッコいい!私、こういう女子のこと好きなんだ♪憧れるなぁ」

ははは、先生が照れてる。しかも涙目にまでなっちゃって。

まぁ、素でいたら何か辛いことがあったから、可愛くしていたんだと思うけどね。

奏って言う推しに好きって言われて嬉しかったんだろうな。

昔のことを思い出して、温かい言葉を貰ったんだから泣くのも無理はないと思う。

俺も、きっとそうだから。でも、まだ家族のことは話さないよ。付き合って半年目くらいに話そうと思う。

だから、それまで待っていてよ、奏。俺も、もっと強くなるから。