僕は、小学校の頃にいじめられたことがある。この性格をからかわれたんだ。
他の男子はみんな、男の子っぽかった。でも、僕は違った。
いつも女子とつるんでいて、口調だって子供っぽい。男の子らしさは感じられない。
ゲームだってそんなにしなかった。それよりはテレビで色々なアニメを見たりしていた。
外出もそこまでしなかった。他の男子は公園で遊んだり、友達の家でゲームをしていた。
僕はずっと自分の家にこもっていた。人が苦手だとか、そういうんじゃない。
ただ、僕の楽しみが読書だったりアニメの鑑賞だったりしただけ。
そんなインドアな僕が、暗い印象の僕が、女子と一緒にいることにムカついたんだろう。
いつからか男子にイタズラをされるようになった。
初めは消しゴムを折ったり、ノートの端に落書きをしたりされていただけだった。
でも、時間と共にエスカレートしていった。物を隠されたり、机の中にゴミを入れられたりされた。
暴力を振るわれることもあった。女子に目立たないようにコッソリと。
僕と一緒にいた女子も、何か異変に気づいたらしい。離れていく子もいれば、心配してくれる子もいた。
ただ、僕は本当のことを言うことはなかった。
そんな中、小学六年の後期、ある女の子に告白された。僕は考えさせてと答えた。
でも、この現場を目撃した男子がいた。この時の僕はある噂を耳にしていた。
同級生に女子にモテモテのイケメンの男子が二人いるって噂。
その一人だと、僕は咄嗟に判断した。だから、その子が話しかけてきても僕は無視した。
もしもその子と関わってしまったら、いじめてくる男子に何をされるか分からないから。
沢山の人に好かれているその男の子に媚を売っている、と思われたら面倒だから。
……でも、意味なんてなかった。
その翌日、僕が学校に着くとあの男の子が教室の前に立っていた。そして僕を見た途端、顔を輝かせた。
その子の周りには女子がいたけど、それを気にすることもなくその子は僕の前まで歩いてきた。
そしてこう言ったんだ。
「いじめってクソダサいよな。しかも自分がモテないからってな。ねぇ、俺と友達にならない?」
返事できないでいる僕の耳に、その子は口を近づけて小さな声である言葉を付け加えた。
「俺といればいじめにも遭わないし、毎日が楽しくなるよ?」
……僕は、男子の友達がいなかった。それだけで、充分の甘い誘惑だった。
だけど、僕もそろそろいじめに耐えられなくなってきた。そして、女子と離れるきっかけにもなると思った。
「…良いの?僕なんかが友達になっても」
その男の子は、当たり前だと言うように、ニコッと笑った。