数ヶ月間、何もせずただおじさんのいる居酒屋に通いつめていた私は何故か痩せていた。スマホが2件鳴った。

『栞〜別れた〜』
『ごめんね、今夜会えない?』

茜とはあれから連絡は取っていたが、順調そうだったのになぜ今別れたのだろう。
茜と連絡を取り会うことになった。

「栞〜」
泣きつくように茜が私へと抱きついてくる。
「よしよし」
私は抱きつく茜の背中をぽんぽんしながら詳しく話を聞く。何やら突然別れを切り出されたらしく、茜自身もわからないらしい。
「もー、大好きだったのに」
「茜、今夜会おうって橋本くんが言ってるんだ。だから聞いてくるよ」
「ほんと?」
そう聞いてくる彼女に私は決心したかのように答える。
「うん。必ず聞いてくるよ」
「ありがと〜」
泣いているような嬉しいようなそんな混じった声音で答える彼女に私は宥めるように背中を擦りながらスマホで返事をした。

その夜。いつものように待ち合わせ場所に行くと橋本が立っていた。
「お待たせ」
「待ってないよ。行こっか」
また橋本のリードでホテルへと向かう。
よりいっそう寂しそうな悲しそうな顔の橋本はいつもより焦っていた。いつもより乱暴なでもどこか優しいようなそんな感じがした。橋本も求めていたのだろうか。
なぜ私は聞くと言いつつこんなことをしているのだろうか。帰り際は聞くんだ。
行為を終えると橋本はいつもと違うことを聞いてきた。
「今日はありがとう。俺たちさ、付き合わない?」
「え?でも、茜を振ったんだよね…?」
「なんだか茜ちゃんとは合わない気がしたんだ」
「合わないって?」
「俺、心を許した人としかできなくてさ」
こういう行為の事じゃないだろうか。行為だけが付き合うという訳じゃないと思うのだけど。
「もちろん、それだけじゃないんだけど、心を許せない人と付き合ってていいのかなって思っちゃって」
私は都合のいい女だってことなのだろうか。
「ごめん。お付き合いはできない。かな」
「そっか。ごめんね」

そのまま橋本はいつものように会計を終わらせ暗闇へと消えていった。