私はスマホを取り出す。そしてパシャリと自分をどう可愛く見せるか考えながら撮る。その後に加工を施した。これで今日も私はかわいくなれたのだろうか。不安になりながらもSNSへと、撮って加工した自撮りの写真をアップする。『今日の最高の1枚』というメッセージとともに。すると、いいねが増えていく。ああ、今日も私は見られている。その優越感に浸りながらも考えごとをしていた。
このアカウントは大学の誰も知らないはずだ。顔などで特定されていなければ。知られているならそれでいい。私は見られたいのだ。オシャレすることも好き。服も好き。メイクも好き。それを見てもらって何が悪いのだろうか。いや、本当はいけない事をしているのかもしれない。ネットという膨大な海の中に自分という個人を特定されかねないものを晒しているのだから。
でも、やめられない。本当はやめたいのかもしれない。分からないが見られたいのだ。誰か私という人物を見つけてほしい。
田口美奈はそう思いながら眠りについた。

今日もメイクをし、それなりにオシャレをし、学校へと向かう。向かう途中友人の榎本葉月にメッセージを送った。
『今日暇?』
『ひまだよー!カラオケ行こー!』
今日のスケジュールを確認する。今日は2限しか入っていない。お昼からカラオケに行けそうだ。
『お昼から空いてるけどそっちは?』
『私もお昼から空いてるよん』
そのままの流れで私たちはカラオケへと行くことになっていた。

数時間後、葉月と合流してカラオケへと向かう。カラオケへ着いた頃、葉月は聞いてきた。
「最近眞斗くんとはどうなの?」
眞斗くんというのは、私の恋人ですごく物静かな人だ。
「仲良くやってるよ〜」
本当に仲良くやっていると思う。物静かで私とは真逆のタイプだと思っていたが喧嘩とかそういうことも無く、親密な関係を築けていると思う。
「それなら良かった!」
そんなたわいも無い話をしながら部屋へと向かった
葉月は部屋に入るなり流行りの曲を歌い始めた。私はなんの曲を入れようか。あえてマイナーなでも誰でも乗れそうな曲を入れた。その間にも歌の合間合間で楽しい話題が上がって行った。

そんな中私はあまり見られているという感覚を味わえなかった。だから私はとあるお願いをした。
「ツーショ撮ろ!」
「いいよ!」
2人で写真を撮ることにしたのだ。
「いくよ!せーの」
そしてそのまま私は聞く。
「SNSに上げていい?顔は隠すからさ」
「顔隠すならいいよ!」
承諾は得た。これでいい。これで見てもらえる。またいいねが増えるのだ。楽しみだ。

私は胸を躍らせながら家へと帰っていった。