私は星鈴学園に通う1年生。




正直に言う…。




私の噂は全て嘘だ。



体でお金を稼いでいる、男が途切れたことがない、先生にまで手を出している…など。




多分まだいっぱいあると思う。




なんでそんな噂が立ったかというと、




「ゆ〜あちゃん!今日も遊ぼーよ!」




ちっ、またお前かよ。







一昨日遊んだばっかじゃん。







こいつ自慢話しかしないから嫌なんだよねぇ。





そうくれば、





「んー、今日はゆあちょっと用事あって無理なの。ごめんね?」





手は丸めて顎に、首は32度に傾け、上目遣い。





「そ、そっか…また誘うね。」




「うん…ごめんね。」




二度と来んなアホ!




はあ…やっと学校に着いた。



「優愛さん。おはようございます。」




この声って…




まさか…



坂本瑠未…(さかもとるみ)




何故か私にくっつき回る少し地味だけど可愛くて、ちょーがつくほど優しい子。





「お、おはよう!坂本さん。」




学校での私は天使スマイル‼



天使スマイル!!



「もう!私のことは瑠未って呼んでくださいっているでしょう?」



「うん、そうだったね。おはよう。瑠未ちゃん。」




「キャー、ありがとうございます!ぜひもう一回呼んでください!」




この素っ気ない私のどこがいいのやら…、、




「も、もう一回?んー、瑠未ちゃん…?」





「……。大好きです!優愛さん!」



なんなのこの子!?





「う、うん…。ありがとう!」





「ほんとですよ!今度家に来ませんか?ぜひお願いします!!」





えー、家…




めんどくさいな…




「んー、うん考えとくね!」




「はい!約束ですよ!」




いつか…いつか…ね




「おい、またあいつ優愛様にくっつきやがって…」




「みんなの優愛様なのに…!」





あぁ…また言われてる。 





この子は私と一緒にいたら悪口言われると分かっていないの?




それなのにどうして私のそばにいるの…?




気づいてない…





いや…




それとも…知ってて?





「優愛さん?どうかなされましたか?」





「へぇ?あ、ごめんね!えーっとどうしたの?」





「えっと、優愛さんがボーッとなさっていたので…。」





「ん…ごめんね。あ、ここだよね?瑠美ちゃんのクラス。」





私はさっさと離れてほしくて周りを見渡してたらいつの間にか彼女の教室に着いていた。





ちょつどよかった!





「えー、そんなぁ…残念です…。」





「ふふ、私も残念だなぁ。でも遅れちゃうのもだめじゃない?ねっ?」





私は離れられるのが嬉しくて思わず声が高ぶってしまった。





「ん…?優愛さん…喜んでませんか?」





やばっ…!





「喜んでないよ。逆だよ。むしろとっても寂しいな。」





私が大嘘をつくと彼女は心底嬉しそうに微笑んだ。






「ですよね!優愛さんの一番は私ですし!」





なんなのこの能天気やろー。





毒っ気も抜かれちゃった。




はあ…





つくづく調子を狂わせられる。






「そうだね!」






「ではまた放課後に!」




「うん!またね〜!」







はあ…





やっとどっか行った。




もう朝から疲れた…。




でも…




最近、瑠美と一緒にいるのが苦痛じゃないと感じ始めている。




もしや私が心を…




それはないよね。




そんな人…いるわけないよね。




私がそんな事を考えていると、




「おい、優愛様一人になったぞ!誰か話しかけて来いよ!」





「はあ?俺なんかじゃ無理だ!お前が行けよ!」




はあ…そんなに悩むんだったら、私から行ってあげる。




「私に何か付いてるのぉ?」




本当は内容まで聞こえていたけど、天使はそんな事しないから。





「へぇ!?わっ、ゆ、優愛様!な、な、なにも付いていません!!!」




「そ~ぉ?ならよかった!」





私が少し話しかけてあげただけなのに、




「おい!お前…優愛様と話しただろ!」



「いいなぁ…クッソ羨ましいぜ!」




「めっちゃいい匂いした…天使…。」





なんなの…ちょろすぎでしょ…




あんたらいつか騙されるわよ…




逆に心配になってきた。




男子はこう言っている反面女子も…




「キャー!優愛様サイコーですぅ!こちらを向いてくださらないのかしら…!」



「あの可愛さ…この学校に優愛様を推していない人などいませんわ!」




こうなっている。




「でもあの方は…?」




あの方?




「確かにあの方も優愛様くらいにモテていらっしゃるのに…全く興味を示されていませんよね。」



私と…同じくらい?



「確かに東の王子様だけは見向きもなされませんね。なぜでしょうか…。」




東の王子…?



まあ、東ってことだから2年生なんだろうけど、、




これはどういうことかというと



校舎の位置だ。




さっき言ったみたいにも2年生の棟は東にある。



そして1年は南、3年生は北。




西は正門側で建物はない。





だから私の二つ名も南の天使。




ちなみに北もいる。




それは…北のプリンセス。




彼女は北の棟…つまり3年生の先輩だ。




黒に近いブルーの髪を持った人…。




名は雪沢澪波。




悔しいけどこの学校で最も私に近く…もしかすると私と同等の美貌を持った人だ。




一回しか会ったことはないけど確かにすごかった。




透き通るような白い肌。



漆黒の瞳。



スラッとした高身長。



私とは全くの逆のタイプの人だ。




だからこそ彼女はライバルとして認めている数少ない人だ。




にしても…東の王子か…




確か、名前は…




「宮瀬蓮、だろ?」



え?



「優愛。」




「恭祐くんっ?どうしたの?」




びっくりした…、、




立川恭祐。




彼は私と同じ南の棟で、なおかつ同じクラス。





すごくイケメンだけど態度が無愛想すぎて3大トップには選ばれなかった可哀想な人だ。




それなら北のプリンセスもだ、っていいたいんでしょ?



でもそれは違う。



確かに彼女もクールだけど彼女は宮瀬蓮の幼馴染というアドバンテージと実家が大財閥雪沢財閥で家柄も優秀。そして勉学スポーツ万能の才色兼備の美少女。



そしてもう一つは北の棟に私、宮瀬蓮のような絶対の美貌を持った人がいなかったこと。




そうして彼女は3大トップとして君臨し続けている。



それに比べ…




彼は運動は出来ても、勉学は全然。家柄も普通だし、何のアドバンテージもない。





それに最大の理由は同じ棟に私がいたこと。




私と彼を比較されちゃあ選ばれないのも無理ない。





「ああ。周りの女供が宮瀬の話をしていたからな。優愛が知らないみたいだから言っただけ。」



あ~、なるほど。



それでか。




「そうなんだね。ありがとう!」





私がそう言うと彼の顔が赤くなった。




私はその瞬間彼が照れているのだと認識した。



こんなことで照れるなんて彼はよほど慣れてないのね。




「ま、まあ優愛の頼みなら聞いてやらんこともない…。」



うん、100%照れ隠しね。




私達がそうこくやり取りをしているとチャイムが鳴った。



キーンコーンカーンコーン




っしゃ!




これで立川と離れられる。




にしても月曜日ってなんでこんなに面倒くさいの?




なにもやる気が起きないんだけど。




サボろーかな。



私は先生にも猫被っているから先生からの信頼は厚いと自負している。



だから屋上の鍵も貰っている。



今日は屋上でサボろ。



ガタン



「せんせ、い。頭が痛いので、保健室行ってもいい…?」


最後は涙目の上目遣いのタメ口。




最高の組み合わせよね。




案の定先生の顔が赤くなった。




「そ、そうか…。先生も行こうか?」



こいつ…アホなの?



下心丸見えだっつーの!



一回遊んであげたからって調子に乗らないで。




先生、エスコートへったくそだからしたくないなぁ。




「うんん。大丈夫…ですっ、一人で行けますぅ、」



「そうか…行ってきなさい。」




あからさまにがっかりしている。




こいつ隠す気もないのか。




まあいいや。



これで授業がサボれるなら、なんでもね。




さ、ここが屋上。




ガチャ



んーー、開放!



気分いいわぁ。




さ、寝よ寝よ。



って




は?




なんでここで…




宮瀬蓮が寝てるの!?




どうして!?




宮瀬蓮は2年生。



そしてここは1年の棟。



意味が分からない。




しかも気持ちよさそうに寝ている。



こいつは…サボり…?



でもおかしい。



だって彼の情報は…



気さくで礼儀正しく優しい上に勉学、スポーツ共に万能。



授業態度もいいため先生からの信頼も厚い。



この学校で最も私に似ている人物。




そんな人がどうしてここに…。




起こす…それとも



「さっきからこっち見てんのは誰だよ。」




え?




この声…宮瀬蓮?




宮瀬蓮が居るところからここまでは20mくらい離れている。



私を見つけるなんて芸当…出来るわけない。



そして何より驚くべきは、




誰…なの?




さっきの声は低くて本物の殺気が乗っていた。




でもいつもの宮瀬蓮だったらこんな声は出さない。





彼は一体…。




「わ、私は花咲…ゆ、優愛。あなたはっ?」




私はなるべく彼を怒らせないようにゆっくり優しく言った。





「はっ?あ…やべ。しまった。」




しまった…?





すると…




「僕に何か用かな?花咲さん。」





は?




さっきとはまるで別人。




喋り方、雰囲気、言葉遣い、、




もしかして彼は私と同じ人種?




「もしかして…気づいちゃった?」




気づいた?



彼の二重人格のことかな…




でも、




気づいたとしてもそれを言うわけにはいかない。




「えっ?なんのことかなっ?」




大丈夫、気づかれてないはず。





「あはは、嘘が下手くそだよ。花咲さん。そんなんで…俺を騙せると思ってんのか?」




ヤバい!



早く逃げなきゃ…




「おっと、逃さねぇーよ?南の天使様?もしくは夜街の女帝…って言った方が分かりやすいかな?」



なんで…



夜街の女帝…



私が夜に遊びに行く時の二つ名。




誰が付けたのか分からない、気づいた時にはもう街中に浸透していた。



まさかこの学校にその名を知っている人がいるなんて…。




でも彼はその名をどこで…?




まさか彼も夜街に…?





「えー、俺と一緒に居る時に考え事はひどいんじゃない?それとも図星すぎてパニクってるの?可愛いね。」




だまって!




今はあんたと話してるよりその後のことを考えないと…。



どうしたら…。




「これからのことを考えてたなら大丈夫だよ?誰にも言わないから。」





は?





「一体何のつもり?」




「へぇ、これが本性ってわけ?」




「無駄な話は要らない。私が聞きたいのは、」




「んー?本当に何もしねぇーよ?」




おかしい…。



「ふっ、あんたって用心深いんだな。別に用なんてねぇーよ、まだ信用できない?」




「当たり前でしょ?誰が信用するか。」




「おー怖い。」




それでも私が信用しないのを見て諦めたのか、




「じゃあさ俺のメイドになれよ。」





は?




メイド?




誰の?




宮瀬蓮の!?





嫌よ!





「ふっ、はは。あからさまに嫌そうだね。ウケる」




ウケないわよ!





「まあまあ、俺の言うことにだけ従ってればいいの〜。」




「私がほしいの?」





「んー、それもあるけど、俺さお前に興味あんだよね。」




興味?




「そ、俺に色目使わないやつ初めて見たしね。」





「そ?使ったくない?」




「あれは本心じゃねぇーからノーカンだ。」




「でも具体的になにするの?」




「俺とデートするとかキスするとか?」




「ふ、ふふ。」




「あ?何笑ってんだよ。」




「うんん。可愛いなぁって思って。」





その言葉に偽りはない。




本当はもっと凄いことを要求されるものだと思ってた。



少なくともそれくらいなら簡単にできる…はず?




したこと…ないけど…。




「いいよ。なる。宮瀬蓮のメイドに。なってあげる。」





「さっきの言葉は腹がたったけど、まあいいや。」




どうやら水に流してくれたらしい。




「じゃあさっそく。」




何が来るんだろう!




水買って来いとかかな?




「なんで楽しそうなのか分からないけど、とりあえず俺以外の男に抱かれるの禁止。」




え?




「えっ?嘘でしょ?約束あるのに。」




もう3年先くらいまで約束してしまっている。




これをなしにするのは流石に…




「は?俺の言うことが聞けないの?」




え…怒った?




「うん。分かった。」




まあ、とりあえずイェスって言っとけばいいや。




「ちなみに破ったら俺と一週間休憩なしでヤル。」



一週間!?







まって…




何を?



なにをするの?




まあいいや、




はあ…




「わかっ…た。約束する。」





「ん、それでいい。まあとりあえずライン交換しよー。」




「わかった。はい」




「…よしできた。じゃ、お互いこの後も頑張るってことでまた後で…ね?」




行っちゃった。




一体何なの、この人。






良く分からないまま私は東の王子のメイドになったのだった。




………なんで?