(ステファン殿下はそんな風に思っていてくださったのね)

それだけでフランソワーズの心が温かくなっていく。


「僕が話しかけるとわずかだが感情が動くのがわかったよ。緊張しているのかな、とかね」

「……」

「だから国を追い出されそうなのに、笑顔のフランソワーズを見た時には、ずっと感情を押さえていたのだろうなと思ったんだ」

「ステファン殿下……」

「もっと早く気づいて、力になってあげられていたらよかった」


ステファンの優しい言葉を聞いて、フランソワーズの心にしまい込んでいた感情が揺れたような気がした。


「あと、そんなところが僕と同じだなと思った。僕の場合は悪魔を抑えることに必死だったからなんだけどね。君も……自分を抑えるために苦しんでいるのかと想像したりもしたよ」

「…………」

「君は自分から国を出て行きたいと思うほどに、辛い思いをしていたんだね」


ステファンはそう言って困ったように笑った。


「こうして君が僕に笑顔をみせてくれると、なんだかとても嬉しいんだ」


ステファンを見つめながら話を聞いていると、視界がぼやけていくことに気づいた時にら目頭が熱くなっていく。
フランソワーズの目からポロリと涙が頬を伝っていた。