久しぶりにフランソワーズが城から帰ると、あんなにも厳しかった父や母がマドレーヌを愛して褒め称えている。
フランソワーズの居場所はなくなり、すべてマドレーヌのものになっていたように感じた。
それを見た瞬間、フランソワーズの中で何かが壊れた。

両親はフランソワーズには見せない顔を見せていたのだ。
マドレーヌに笑みを向けて彼女を可愛がっている。
そんな姿を見たことでフランソワーズの心に亀裂が入ったかのように衝撃を受けることになった。

(どうして……わたくしはマドレーヌのように愛されなかったの?)

父と母に愛されているマドレーヌを見て、生まれて初めてマドレーヌに強烈な嫉妬と怒りを覚えた。
そこからフランソワーズはあらゆる手を使いマドレーヌを追い詰めようとしていく。
そんな心を悪魔に利用されて、宝玉を黒く染め上げるために利用されてしまうのだ。

そんな物語になるはずだったのだが、幸い前世の記憶と物語の流れを思い出すことができた。
前世では天涯孤独の身だった。
孤児院で育ち、ずっと素敵な家族に囲まれて過ごすことに憧れていた。
そのおかげで随分と可愛げのない性格に育ってしまったように思う。
しかし強くなければ生きてはいけなかった。
窮屈な思いと誰にも理解されない孤独、そして心ない声にも一人で耐えていた。