フランソワーズは辛い記憶を無理やり押し込んでから席に着いた。
料理が運ばれてくるが、フランソワーズが先ほど好んでいた食材ばかりが並べられていることに気づく。


「ステファン殿下、これは……!」

「ああ、君が好きそうな食材を使ってもらった。シンプルであっさりした食事を用意してもらったんだよ」

「……!」


フランソワーズはステファンの気遣いが嬉しく思えた。
先ほど思い出した苦い記憶がスッと消えていくような気がした。
それから馬車の時と同様に、ステファンとは面白いくらいに会話が弾み、自然と笑顔が増えていく。
彼は人を絶対に悪く言ったりしない。
そんなところもセドリックとは違い、一緒にいて居心地がいいと感じる瞬間だった。

食事が終わり、可愛らしく飾られたデザートが目の前に並べられていく。
紅茶を飲みながらフランソワーズは自分が意識を失った後の話を聞こうとしたが途中で唇を閉じた。
ステファンに水を口移しでもらったことを思い出してしまったからだ。
恥ずかしさで頭がどうにかなりそうになった。

祈っている間は時間の経過を忘れがちだ。
こうして体感してみると悪魔祓いは、簡単な仕事ではないと気づく。

(たしかマドレーヌは悪魔を消し去って人々を救って、皆から感謝されていたのよね)