ステファンがすさまじい精神力で耐えていたことも知らずに、フランソワーズは自分の知識との差異について考えていた。

(わたくしは宝玉のために祈りを捧げて抑えてばかりだったから、他の悪魔のことはあまり知らないのよね……)

己の知識不足を反省しつつも、夕食の誘いを断る理由もなくフランソワーズは頷いた。
ステファンは「楽しみにしているね」と言って、フランソワーズを愛おしむように髪を撫でてから部屋を出る。
気持ちを聞いたからか彼を強く意識してしまう。

(ステファン殿下が……わたくしに好意を寄せてくださるなんて信じられないわ)

ふわふわとした温かい気持ちは初めて感じるものだ。
フランソワーズは、侍女たちに身なりを整えてもらい準備をしてから夕食へと向かう。
先ほどよりも正装したステファンは眩しくてたまらない。

(ステファン殿下って、どうしてこんなにかっこいいのかしら……)

完璧なヒーローを具現化したような圧倒的なビジュアル。
高貴なオーラを纏う王子様が、フランソワーズを愛おしそうに見つめている。
フランソワーズは彼にエスコートされるまま、夕食の会場へと向かう。

フランソワーズはシュバリタイア王国では宝玉の前で祈りを捧げてばかりいたため、セドリックと夕食を共にしたことなどほとんどない。
フランソワーズの記憶の中で最後に二人で食事したのは数年前だ。
そこではこんな苦い記憶があった。