「君に剣を向けたのに僕を、またこうして受け入れてくれた」

「それは仕方がないことですから……!」

「いいや。普通ならば許せないだろう。フランソワーズ、君は強い女性だ」

「……!」

「それに……大丈夫だとフランソワーズに言われた時、本当に嬉しかった」


フランソワーズの手を握っているステファンから緊張が伝わってくる。


「ずっとセドリックの婚約者だった君が、自由になりたかったことはわかっている……本当はこの手を離さなければいけないことも」

「……ステファン殿下」


ステファンは、そう言ってフランソワーズの手の甲に口付ける。
その手は僅かに震えているような気がした。
彼はフランソワーズの気持ちを一番に考えてくれていたのだろう。


「だが、君の手を離したくない……こんな気持ちになったのは初めてなんだ」


フランソワーズはステファンになんて言葉を返せばいいかわからなかった。
毎日続く聖女の仕事と突然の婚約破棄。
物語を壊して息の詰まるような日々から解放されたくて、国を飛び出してきた。
それからステファンに出会い、力になれればとフェーブル王国へとやってきた。