この世界で女性一人で安全に暮らせる場所は限られている。
最初は王家の力を借りて、生活の地盤を築いていけたら……。
フランソワーズが「よろしくお願いします」と、言おうとした時だった。


「フランソワーズさえよければ、城で暮らしてほしい」

「……城で? どうしてですか?」


フランソワーズはステファンの言葉に首を傾げた。
 

「僕と共にこの国を守ってほしいんだ」

「……?」


フランソワーズは、もう一度言って欲しいと意味を込めて耳を傾ける。
『僕と共に』と聞こえたような気がするが気のせいだろうか。
ステファンは優しい笑みを浮かべながら、衝撃的な言葉を口にする。


「フランソワーズ、僕と結婚してくれないか」

「けっ……結婚!?」


驚きから言葉を詰まらせた。
フランソワーズの大声にも動じることなく、ステファンは頷いている。
もう一度、確認するために問いかける。


「ステファン殿下……ご自分が何をおっしゃっているのか、わかっているのですか?」