思わずマドレーヌの名前を出そうとして、フランソワーズは途中で口をつぐむ。
彼女は一人でこのレベルの悪魔と何度も対峙していたのだろう。
王妃含めて力の強い聖女ばかり周りにいたフランソワーズには、いまいち自分の力の強さがわからない。
王妃は他の聖女たちと協力しながら宝玉を守っていたことを考えると、フランソワーズの方が力が強いのか。


「あの程度なんてとんでもない。国中の神官や悪魔祓いを集めたって誰も討ち払うことなどできなかった。それをたった一人で退けたんだぞ?」

「……え?」


それからステファンはどれだけフランソワーズの聖女として力が素晴らしいかを力説してくれた。


「フランソワーズさえよければ、ずっとこの国にいてくれないか?」

「あの条件のことですか? この国でお世話になれたら嬉しいですけど……」


ステファンが馬車の中で話していたことを思い出す。
フランソワーズの生活を保証してくれる話のことだ。
特に行きたいと思っていた場所もないフランソワーズにとってはありがたい申し出だった。
たとえ平民だとしても、フェーブル王国で自由に暮らせるのなら幸せになれそうだ。

(わたくしにも悪魔が祓えるのなら、悪魔祓いの仕事をしながらゆっくりと過ごそうかしら)