(あの時、少しだけ剣が掠っていたのね)

それを見ていたステファンの表情が一気に険しくなった。
よく見ると彼の腕や顔にも包帯が巻かれている。


「フランソワーズ、あの時は本当にすまなかった。僕たちを救ってくれようと動いていた君に……怪我をさせてしまうなんて」

「いいえ、あの時はステファン殿下は操られていたのですから仕方ありませんわ」

「……!」

「ステファン殿下が無事でよかったです」


フランソワーズがそう言って笑うと、ステファンの逞しい腕が腰に回る。
ステファンを抱きしめ返すように手を回した。
暫く抱きあっているとステファンの心臓の音が聞こえてくる。

(温かい……ステファン殿下が無事で本当によかった)

そう思っているとステファンが上半身を持ち上げる。
フランソワーズが彼を見上げると、頬を優しく撫でる手のひら。
そのまま互いに見つめ合ってあっていると……。


「フランソワーズは目覚めたというのは本当……っ」


バンッという音と共に乱暴に扉が開いた。