ステファンの手から力が抜けていく。
どうやらかなり心配をかけてしまったようだ。
ステファンの目の下に刻まれた隈を見て、手を伸ばそうとした時だった。


「ステファン殿下……」


名前を呼んだ瞬間、フランソワーズのお腹からグーッと音が鳴る。
あまりにも大きな音にフランソワーズの顔が、真っ赤に染まった。


「あ、あの……」

「お腹が空いたのだな」

「…………はい」

「すぐに食事は用意させる。フランソワーズはここで待っていてくれ」


そう言ったステファンはすぐそばに控えていた侍女を呼んだ後に食事を用意するように指示を出す。
それからフランソワーズを椅子に座らせると、ステファンは手を優しく掴みながらその場に跪いた。
真っ直ぐにこちらを見つめる瞳にフランソワーズの心臓はドクドクと激しく音を立てていた。


「ステファン殿下?」

「改めてお礼を言わせてくれ。フランソワーズ」

「え……?」

「フランソワーズは僕たちの命の恩人だ」


ステファンのその言葉で、フランソワーズは改めて自分の祈りで悪魔を祓えたのだと実感した。
フランソワーズは一日中、祈り続けていたそうだ。
宝玉を抑えるために半日ほど祈り続けることはよくあることだが、丸一日祈り続けたのは初めてだった。