門から城までの長い道のりを歩いていると、フランソワーズを出迎えるためなのか大勢の人たちの姿が見えた。
フランソワーズが目を凝らすと、フェーブル国王や王妃もいることがわかる。

(ど、どうしましょう……!今から身なりを整えるわけにもいかないし)

ボサボサの髪を簡単に結えているだけで簡素なワンピースを着ているフランソワーズは、今は平民にしか見えないだろう。
足を止めたフランソワーズは一歩、また一歩と後ろに下がる。
ステファンから笑顔が消えたと思いきや何故かフランソワーズを抱え上げた。
どうやら足を止めたことで、逃げようとしていると思われたようだ。

フランソワーズは驚いてバタバタと足をバタつかせると、ステファンは逃がさないとでも言いたいように顔が近づく。
唇が触れてしまいそうな距離にフランソワーズの動きがピタリと止まる。


「逃がさないよ。フランソワーズ」


ステファンの低い声が耳元のすぐ近くで響く。
耳を押さえながら首を横に振った。
ステファンにあれだけいい条件を提示してもらったのに、自分からそれを蹴るなどありえない。
フランソワーズは逃げるつもりはないと意思を示すために慌てて口を開いた。