フランソワーズは自分の体が揺れていることに気づいていたが起きられずに「ん~」と唸っていた。
身を捩ってみても体が痛いし、触れている部分が硬いので寝心地が悪い。
まだ眠っていたくて、手を払い退けつつ丸まろうとした時だった。


「おはよう、フランソワーズ」

「……む?」

「よく眠れたかい?」


フランソワーズはステファンの端正な顔立ちと吸い込まれそうな青い瞳をぼんやりと見つめていた。
ステファンはフランソワーズを見て優しく微笑んでいる。
頭を撫でられる感覚に再び目を閉じた時だった。


「気持ちよさそうに眠っていたから起こしたくはなかったけど、フェーブル王国に着いたよ」

「──ッ!」


状況を把握したフランソワーズは飛び起きた。
するとステファンと唇が触れてしまいそうな距離まで近づいていることに気づく。
フランソワーズはステファンから離れるようにして、ゆっくりと体を引いた。
ゴツリと痛々しい音と共に後頭部をぶつけてしまい身悶えることになる。

何日も馬車に揺られていたからか、重たい疲労感に腰を抑えた。
フランソワーズは長時間の馬車での移動で疲れてしまい、眠ってしまったようだ。
それに寝顔もバッチリと見られてしまったようだ。

(わ、わたくしったらなんたる失態を……!)

フランソワーズが呆然としていると、追い討ちをかけるようにステファンから声が掛かる。


「可愛い寝顔だね」

「~~~っ!」