ステファンは悔しそうに唇を噛んでいる。
フェーブル国王は大国ゆえに、シュバリタリア王国に頭を下げてまで頼りたくないと考えていたそうだ。
だからこそステファンは個人的に動いており、セドリックとも積極的に交流を持とうとしていたらしい。


「セドリックに聞いても何もわかるわけがないね。彼は何もしてないのだから……」

「はい……悪魔祓いは聖女たちの仕事です。セドリック殿下は直接関わっているわけではありませんから」

「フランソワーズ嬢、情報提供を感謝する」

「いえ……大したことではありません」


フランソワーズはシュバリタリア王国では皆、当たり前のように知っていることを話だけである。


「本当にありがとう、フランソワーズ嬢」


ステファンの本当の笑顔を見たような気がした。
彼の仮面が取り払われた本当の素顔を見ていると、フランソワーズの心臓がドキドキと音を立てる。
この短時間で彼の色々な表情を目にしたからかもしれない。

(こんな気持ち、セドリック殿下には感じなかったわ)

こうしてフランソワーズはフェーブル王国に向かうことになった。
フェーブル王国にはシュバリタリア王国から五日ほど、馬車で移動しなけれなければならない。