シュバリタリア王国のように『聖女』はいなくとも、悪魔を祓う『悪魔祓い』が、いるということはフランソワーズも知っていた。
教会にいる神父にもその力があると聞いたことがある。


「……できなかったんだ」

「できない? 何故でしょうか」

「とても強い悪魔だったらしく、誰も祓うことができなかった」

「……!」

「シュバリタイア王国の聖女に来てもらったこともあったんだが、解決することはなかった……王家にも力の強い聖女は国の外に出せないと断られていたんだ」

「力の強い聖女、ですか?」

「ああ……王妃陛下にも長い時間、国を離れさせるわけにはいかないと言われてしまった。守るものがあるから、と」


フランソワーズには、それが宝玉を守るためだとすぐに理解できた。
それと何の利益はないはずなのに、ステファンがセドリックと表向きだけでも懇意にしていた理由がわかったような気がした。

(シュバリタリア国王は何故フェーブル王国に力を貸さなかったのかしら……王妃陛下なら悪魔を祓えるはずでは?)

もし悪魔を祓えたら、大国のフェーブル王国に大きな借りを作ることだってできたはずではないだろうか。
彼らはそれをしなかった理由が気になっていた。
それとシュバリタリア王国で、もっとも力が強い聖女であるはずのフランソワーズに声がかかったことはない。