フランソワーズはいまいち状況がわからないまま、四人のやりとりを馬車の中から眺めていた。
ステファンの側近でもある二人の騎士の名前は、イザークとノアというらしい。
イザークはライトブラウンの短髪に頬に傷がある背も高く体格のいい男性だ。
ノアはステファンと同じで中性的な顔をしていて、ワインレッドの長髪を結えている。


「フランソワーズ嬢のおかげだ。本当に力を押さえ込むことができた。これでオリーヴを救える……!」

「……?」


ステファンを呆然としながら見ていると、嬉しそうな彼と目があった。
ステファンはフランソワーズの前に手を伸ばす。
フランソワーズが戸惑いつつも、ステファンに手を引かれて馬車の外へと出た。
そのままステファンはフランソワーズの前に跪く。
流れるように手の甲なや口付けられて驚いていたフランソワーズだったが、ステファンはこちらを見上げるようにして視線を向ける。


「フランソワーズ嬢、フェーブル王国に来て力を貸してくれないか?」

「……っ!?」

「君の力が必要なんだ」


驚いて目を丸くしているフランソワーズとは違い、四人の期待に満ちた視線が突き刺さる。
混乱しているとステファンが立ち上がり、皆に声をかける。


「今すぐフェーブル王国に行かなければっ! フランソワーズの力ならばきっと……!」

「ち、ちょっと待ってください!」

「ああ、そうだね。フランソワーズ嬢はフェーブル王国で保護するよ。もちろん衣食住、すべてを保証しよう」