フランソワーズも自国ではあるが、この辺りに何があるのかは地図がなければさすがにわからない。
聞きながら教会を探すが、人の姿も疎らでこちらを警戒しているのか距離を取られているようだ。
フランソワーズにもどうしようもできなかった。
御者や騎士たちの表情に焦りが滲む。

(何故、医者ではなくて教会なのかしら? それにこの気配……どこかで感じたことがあるような)

ステファンは大粒の汗が額に浮かんでいき、徐々に悪化していく。
彼の側近である二人の騎士に何かの病かと説明を求めるも口をつぐんで答えを濁してしまった。
今まで黙っていたフランソワーズだったが、ステファンの様子を見て口を開く。


「今すぐにステファン殿下を医師に診てもらった方がいいのではないでしょうか?」

「医師、など……役には立たないさ」

「え……?」

「廃れてたって教会のが、まだマシだ」


ステファンの言葉を疑問に思いつつも、フランソワーズは彼の首にシャツが食い込んで赤くなっていることに気がついた。


「ステファン殿下、シャツのボタンを外した方が……」


フランソワーズの言葉を受けて、首元に手を伸ばしたステファンだったが力無く腕が下に落ちてしまう。


「指に……力が入らないようだ」