そう言って再びフランソワーズは窓の景色を眺めていた。
どのくらいそうしていただろうか。
ふと、フランソワーズがステファンに視線を向けると彼の顔色は悪く明らかに体調が悪そうに見える。


「ステファン、殿下……?」

「……っ」

「顔色が悪いですが大丈夫ですか?」

「平気だ……すまない」


フランソワーズがステファンに手を伸ばして触れようとするが、彼は静かに首を横に振る。
体が痛むのか胸に手を当てて俯いてしまった。
明らかに平気そうには見えないのだが、何か理由があるのだろうか。
ステファンは荒く息を吐き出している。
フランソワーズは彼に触れようとした手を引いた。


「まさかここで……こんなことになるなんてね」

「ステファン殿下、休んだ方が……!」

「フランソワーズ嬢、近くの教会に寄らせてもらってもいいだろうか?」

「……教会ですか?」

「ああ、そこで休めば少しは落ち着くはずだ」


フランソワーズはステファンの言葉を不思議に思いつつ頷いた。
王都にはたくさんある教会も、離れるほど数は少なくなり見つけることが大変になってしまう。
だんだんと馬車の中でステファンの体調が悪化していく。
御者も騎士たちも、知らない土地で教会を探すのは難しいらしい。