小説の中では控えめなマドレーヌは会場で両親と共にいた。
しかし今回、マドレーヌはセドリックの隣で腕を組んで胸を擦り付けているなど、はしたなくて見ていられなかった。

(マドレーヌはセドリック殿下を体で落としたのかしら……)

フランソワーズとセドリックはそのような雰囲気になったこともなく、多感な時期には婚約者が決まっていた。
そんなセドリックが可愛らしいマドレーヌに迫られれば、断れるはずもない。

それにフランソワーズを追い詰めるつもりが、逆に返り討ちにあったとなれば建前もプライドもボロボロだろう。
それもフランソワーズが冤罪が証明されたら、立場はもっと悪いものとなるが、そんな醜聞は権力で握りつぶされてしまうことはわかっていた。
本当はもっと言いたいことがいっぱいあったが、少なくともあの場にいた貴族たちは宝玉のこともあり、不安が残ったことだろう。
マドレーヌが何も学んでいないことだけは真実なのだから。

(もうわたくしには関係ないけれど……)