* * *
「──フランソワーズ、フランソワーズッ!」
「ん……?」
「フランソワーズ、大丈夫かい?」
「……ステファン、殿下?」
ステファンに名前を呼ばれたフランソワーズは、瞼をゆっくりと開く。
「わたくしは……?」
「フランソワーズ、見てくれ」
ステファンが指をさす方へ視線を向ける。
先ほどまで真っ黒だった宝玉の澱みは、いつの間にかなくなっているではないか。
そしてフランソワーズが何度か瞬きをした時だった。
パキッという音と共に宝玉は真っ二つに割れる。
(嘘……宝玉が割れたの?)
フランソワーズは信じられない気分だった。
それと同時に大きな窓から見える暗雲から、徐々に光が漏れていく。
太陽の光の温かさを感じて、フランソワーズは涙ぐむ。
フランソワーズが安心感からフラリと倒れ込むのをステファンが支えてくれた。
真っ二つに割れてしまった宝玉は、みるみるうちに灰になっていく。
それと同時にマドレーヌの悲鳴が部屋の中に響き渡る。
何事かと思い、背後を振り返ると……。
「いやあああっ! 消えたくないっ、消えたくない!」