セドリックは、フランソワーズを求めるように腕を伸ばしている。
ステファンの指示もあり、門番に抑えられつつも必死に抵抗しているセドリック。
フランソワーズは無意識に一歩、また一歩と後ろに下がっていく。
必死にもがく姿は一国の王太子だとは思えない。
門番たちもセドリックを傷つけるわけにまいかず、戸惑っているように見えた。
「フランソワーズ、フランソワーズッ! 俺だ、セドリックだっ」
「……ッ」
「口を塞いで、今すぐに不法侵入者を追い出してくれ」
冷たいステファンの声が上から聞こえた。
鋭くセドリックを睨みつけるステファンは、先ほどとはまるで別人のようだ。
背筋がゾクリとするような低い声に驚いてしまう。
(ステファン殿下がこんな風に怒るなんて……)
しかしセドリックは引くつもりはないようだ。
「やめろっ! 俺はシュバリタイア王国の王太子だぞ!? 無礼者っ、今すぐにその手を離せ」
門番に止められて、ステファンに不法侵入者扱いをされているということは許可を得ていないのだろう。